令和5年度 病害虫発生予察情報 特殊報 第1号(トマトキバガ)

トマトキバガの発生について

1.病害虫名トマトキバガ(チョウ目キバガ科)
Tuta absoluta (Meyrick)

2.特殊報の内容青森県における誘殺の初確認

3.発生経過
令和5年6月15日、津軽地域のトマト栽培ほ場周辺に設置したトマトキバガの
侵入調査用のフェロモントラップにおいて誘殺されたガの成虫を横浜植物防疫所
が同定した結果、本県では未発生のトマトキバガであることが6月21日に判明し
た。現在のところ、本種による農作物の被害は確認されていない。

4.国内外の発生状況
本種は南アメリカ原産であるが、2006(平成18)年にスペインへの侵入が確認
されて以降、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、
インド、ネパール、東南アジアに分布を拡大し、2021(令和3)年までに台湾、
中国、中央アジア諸国等の近隣地域でも発生が確認されている。
国内では、2021(令和3)年10月に熊本県、同年12月に宮崎県のトマトほ場で
初めて確認された。それ以降、鹿児島県、大分県、福岡県、長崎県、愛媛県、和
歌山県、岡山県、山口県、広島県、佐賀県及び沖縄県でトラップによる誘殺が確
認されている。

5.形態及び生態
成虫は、翅を閉じた静止時で体長5~7㎜(前翅長約5㎜、開張約10㎜)。
前翅は灰褐色の地色に黒色斑が散在する。後翅は一様に淡黒褐色である。
幼虫は、終齢で約8㎜。体色は淡緑色~淡赤白色。頭部は淡褐色。
前胸の背面後方に細い黒色横帯がある。
1年に複数の世代が発生し、繁殖力が高い。発生世代数は環境条件によって異
なり、年に10~12世代発生する地域もある。卵~成虫になるまでの期間は24~38
日程度で、気温が低い時期はさらに延びる。
成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多く、雌は一生のうちに平
均約260個の卵を寄主植物の葉の裏面などに産み付ける。幼虫は1齢から4齢まで
の生育ステージがあり、土中や葉の表面で蛹化する。

6.主な寄主植物と被害
トマト、なす、ピーマン、ばれいしょ等のナス科植物が主要な寄主植物である。
マメ科のいんげんまめも、寄主植物として確認されている。
トマトでは、茎葉の内部に幼虫が潜り込んで食害し、孔道が形成される。葉の
食害部分は表面のみ残して薄皮状になり、白~褐変した外観となる。果実では、
幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数㎜程度の穿
孔痕が生じるとともに腐敗が生じ、果実品質が著しく低下する。

7.防除対策
(1)ほ場内をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
(2)トマトキバガの発生が疑われた場合は、病害虫防除所(TEL 017-729-1717)に
連絡する。
(3)発生を拡大させないため、薬剤散布を行うとともに、被害葉や被害果実はほ
場に放置せず、速やかに土中に深く埋没するか、ビニル袋などに入れて一定期
間密閉し、寄生した成幼虫を全て死滅させ、適切に処分する。
(4)現在のトマトキバガに対する登録農薬は別紙(1)のとおり。
また、植物防疫法第29条第1項に基づく措置として、別紙(2)に記載され
た農薬による防除を行うことができる。
なお、薬剤散布にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため系統が異なる薬
剤のローテーション散布を行う。

詳細は添付ファイルを御覧ください。
20230623_特殊報_青森県_トマトキバガ

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