
県の普及指導員等が、令和7年11月、最新技術を取り入れたスマート農業を学ぶため、ドイツを訪問しました。
この視察研修で学んだ最先端技術や、現場での取組などを報告します。
ぜひ御覧いただき、最新のスマート農業に触れていただければ幸いです。
視察期間
令和7年11月10日(月)~16日(日)
視察先
1.ミュンヘン工科大学:最先端のロボット・AI技術を研究する大学
2.ヴィクトアリエン市場:ドイツを代表する市場
3.アグリテクニカ:
40万㎡(40ha)の展示場に、52か国、2,849社が出展した、世界最大規模の農業技術・機械の見本市
4.スマート農業技術・機械を活用している農業者
視察結果
1.ミュンヘン工科大学 ―AIとセンサー技術の組み合わせによる精密作業の自動化の研究―
- ハインツ・ベルハント教授と面談。
- 植物の生育量の指標としているNDVI(植生指数)は、トウモロコシなどの、葉の密度が高い作物の場合、精度が低下する問題がある。このため、マルチスペクトルセンサーと光電子フィルターシステムを開発。今後は、センサーでのリアルタイムなデータ収集と、AIモデルによる自律意思決定を組み合わせて、精密な施肥・作業指示を自動で行うシステム・機械の開発を目指している。
- また、除草剤のスポット散布、化学肥料の削減(環境負荷低減)、可変施肥による施肥管理の最適化を目的に、ドローンに搭載したマルチスペクトルカメラで、雑草の自動検出、作物の生育ステージ・ストレスの判断を行う研究をしている。最終的には、得られたデータをAIが解析・判断して、作業を自動化することを目標としている。

2.ヴィクトアリエン市場 ―有機農産物が充実―
- 130年以上の歴史を持つ伝統的な食品市場で市場調査を実施。
- りんごは収穫時期ということもあり、店舗により3~7種類が並んでいた。小さいものが多く、価格は1個140円ほど。bio(有機栽培)のりんごも販売されていて、外観は慣行栽培に遜色なく、価格は2割ほど高かった。
- 野菜は、ミニトマトが7個で約540円、ジャガイモが1個約100円。そのほかにも、にんにく、ごぼう、キュウリ等、様々な野菜が販売されていた。かぼちゃは北海道産が販売されていて、通訳者によると、ミュンヘン周辺で販売されているかぼちゃは、ほぼ北海道産とのこと。ドイツではハロウィンで使用する装飾向けのかぼちゃの栽培が盛んであるため、食味が良い北海道産のかぼちゃが広まったよう。価格は1個270円ほどだった。

3.アグリテクニカ ―世界の潮流はロボット化とセンシングxAIによる次世代農業―
- 2年に1度開催される世界最大規模の展示会。約40万㎡(40ha)という広大な展示場で1週間開催されたが、大手メーカーのブースでは、人混みで進めない場面もあり、盛況だった。
- 大手メーカーでは、ロボットトラクターなど、無人で作業する機械が目立っていた。労働力不足の解消や、農作業の負担軽減に向けて、技術開発が進んでいるが、普及段階には至っていない模様。機械への投資に見合ったメリットが示されれば普及していくと思われる。今後は、AIを搭載した安全監視機能との組み合わせによって、複数台のロボットトラクターでの同時作業や、遠隔操作・夜間無人作業の技術開発、普及が進むと考えられる。
- また、高度なセンサーやドローンを活用したリモートセンシング技術の展示も多かった。土壌の水分や養分、作物の栄養状態など、これまで以上に正確なデータをリアルタイムで取得することが可能になっている。AIとの連携による作業指示のサービスも始まっていて、今後は、データに基づいた、これまで以上に精密で正確な管理で、資源利用の最適化や生産性・品質の向上が進むと思われる。
- ヨーロッパは、環境負荷低減の意識が高い国が多く、有機農産物の需要が多いため、有機栽培の拡大に向けた、レーザー除草や、スポット農薬散布、物理的なスポット除草、可変施肥等、環境負荷低減と生産性の向上に向けた技術開発が進んでいた。まだ普及段階ではないが、今後は、AIを組み合わせることで、より早く、正確な作業が可能になり、普及していくことが考えられる。

4.生産者視察 ―精密な土壌管理とデータ活用による持続可能な大規模経営―
- ドイツのザクセン=アンハルト州で200年以上農業経営をしているミュンホフ親子と面談した。ミュンホフ親子と従業員5名で1,124haを経営。小麦、菜種、大麦などを栽培している。
- 均一な生育管理、コスト削減のために様々な情報を組み合わせて、栽培管理を行っていた。また、EUでは過剰な施肥による土壌や地下水汚染を防止するための規制があり、その規制に対応するためにもデータに基づいた適切な施肥管理を行っていた。
- 土壌情報を最も重要視していて、耕作地を約3ヘクタール単位の小さなゾーン(全ほ場で約300ゾーン)に分割し、ゾーンごとに管理している。各ゾーン内で約20カ所穿孔・採土して土壌分析を実施。6年に1度養分量を分析している。
- 土壌分析マップに基づいて、土壌中にリンやカリウムなどの栄養素が不足している(少なすぎる)箇所にのみ、有機肥料や化学肥料を施肥する。さらに、トラクターの屋根に設置した窒素センサーで、バイオマス(植物体の量)を測定し、リアルタイムで必要量の肥料を散布している。
- コンバインの収穫量マップ、土壌データ、衛星画像から診断した生育量、地質調査、標高調査、有効圃場容水量などを重ね合わせ、各ゾーンの「収穫ポテンシャルマップ」を作成し、施肥計画の基礎としている。マップのポテンシャルが極端に低い場所には作付けしていない。
- 可変施肥での肥料コスト削減などの効果で、10年間の累積で、174,000ユーロ(約3,100万円)の削減になっている。

5.視察調査を終えて ―本県でもデータ駆動型農業を―
今回のドイツ視察を通じて、スマート農機や営農管理システムの導入も重要だが、それらの機能をフルに発揮するためには、「データ駆動型農業」への転換が重要であることを再確認した。土壌環境、水分、養分、生育、収量、気象などのデータを継続的に蓄積し、見える化したうえで、施肥・潅水・作業計画や投資判断に結び付けていくことで、労働力不足への対応、生産性向上、環境負荷低減、そして農業所得の向上に繋げることができる。さらに、これらのデータを生産者単位で抱え込むのではなく、地域単位で共有・分析することで、時間のかかる基礎データの蓄積を早め、地域全体での高品質・安定生産が期待できる。
本県では、スマート農機の普及が進んでいるため、今後の展開として、土壌分析や衛星等を活用したセンシング、生育・収量調査、食味・収量コンバイン等によるデータの蓄積と、そのデータの分析結果を基にした栽培管理、また、データ活用人材の育成などを一体とした「データ駆動型農業」を進めていく必要があると感じた。
