クロピラリドは、海外で牧草等に使用されている除草剤で、日本では使用されていません。
クロピラリドは分解がされにくく、クロピラリドを含む除草剤が使用された輸入粗飼料を給与された家畜の排せつ物やこれを原料とした堆肥に残留します。
国内で、クロピラリドが残留した堆肥の使用が原因と疑われる作物の生育障害が報告されていますので、被害防止に向けて、下記により対応いただようお願いします。
なお、クロピラリドは家畜や人に対する毒性は低く、輸入飼料に残留したクロピラリドが原因となって、家畜自身やその畜産物を摂取した人に対して健康被害をもたらすことはないと考えられています。
クロピラリドによる生育障害の現れ方は品目により異なります。トマト、ミニトマト、スイートピーなどでは、非常に低い濃度で障害が起こり、特徴は、生長点の異常生育や葉の変形などです。
記
1 通知のポイント
輸入飼料中のクロピラリド濃度は極低濃度のものが大部分を占めるが、小麦ふすま及び大麦ぬかについて濃度が高い傾向にあった。堆肥中のクロピラリド濃度は、牛、馬、豚、鶏ともに検出されており、特に肥育牛の排せつ物に由来する堆肥が高い傾向にあった。
クロピラリドによる生育障害は、トマト等のナス科、ダイズ等のマメ科、キク等のキク科で発生しやすいので、畜産農家、堆肥製造業者等は取引先とこれらの情報を共有するとともに、園芸農家や育苗業者においては、生育障害が発生しやすい作物への家畜由来の堆肥の使用は、ポットによる育苗生産では控え、施設栽培では投入量を低減すること。
2 平成29年度輸入飼料中に含まれるクロピラリド濃度の調査結果の概要
輸入飼料中のクロピラリド濃度は、粗飼料でごく低濃度のものが大部分を占める一方、一部に高濃度のものが認められた。濃厚飼料のうち穀類についても同様の傾向にあるが、特に、小麦ふすま及び大麦ぬかについて濃度が高い傾向にあった。
3 平成29年度堆肥中に含まれるクロピラリド濃度の調査結果の概要
堆肥中のクロピラリド濃度は、家畜の種類及び用途(肥育牛、乳用牛等)によって、給与している飼料の違いから異なる傾向があり、小麦ふすま又は大麦ぬかを多給する肥育牛の排せつ物に由来する堆肥は、他の畜種の排せつ物に由来する堆肥に比べて濃度が高い傾向にあった。一方、豚又は鶏の排せつ物のみに由来する堆肥からもクロピラリドは検出されているが、これまでのところ、これらの施用による生育障害発生の報告はない。
4 クロピラリドによる生育障害の発生状況の概要
これまでの報告によると、生育障害が発生した作物は、トマト、ミニトマト、スイートピー、エンドウ、ピーマン、トウガラシ、ナス、花苗、ウリ類で、当該作物の栽培に使用された堆肥又は培土は、露地の3件及び不明の2件を除き、育苗ポット又は施設圃場で使用されていた。
5 取組内容
(1)輸入飼料販売業者の皆さんへ
ア 家畜に飼料として給与される輸入飼料について、クロピラリドの使用状況を把握し、必要に応じて残留農薬分析を行うなど、引き続き、合理的に達成可能な範囲で可能な限りクロピラリド濃度の低減に努めること。
イ 「輸入飼料を給与した家畜の排せつ物由来の堆肥には、クロピラリドが含まれている可能性があり、特に小麦ふすま又は大麦ぬかを多給する肥育牛等の排せつ物を多く含む堆肥には、高い濃度でクロピラリドが含まれている可能性がある」旨とする情報を、輸入飼料及びこれらを原料とする飼料の販売先及び牛又は馬を飼養する農家等に周知すること。
(2)畜産農家の皆さんへ
ア 排せつ物の提供先と「牛又は馬由来堆肥にはクロピラリドが含まれている可能性があり、特に肥育牛等の排せつ物を多く含む堆肥には、高い濃度でクロピラリドが含まれている可能性がある。このため、園芸作物等への施用に当たっては作物の種類や施用量に留意し、場合によっては施用を控える必要がある」旨の情報を確実に共有すること。
特に、ポットにおける育苗又は施設栽培に施用する場合であり、かつ、トマト等のナス科、ダイズ等のマメ科、キク等のキク科の作物等、クロピラリドによる生育障害が発生しやすい作物で堆肥又は培土の施用を予定する園芸農家・育苗業者等との間では、確実にこの情報を共有すること。
イ クロピラリド感受性作物を用いた生物検定を実施した場合は、その結果を排せつ物の提供先に伝達すること。
ウ 提供した家畜排せつ物等によってクロピラリドが原因と疑われる生育障害が発生したことを把握した場合は、地域県民局に速やかに報告するとともに、県等による原因究明のための調査に協力すること。
(3)堆肥製造・販売業者の皆さんへ
ア 堆肥の提供先と「牛又は馬由来堆肥にはクロピラリドが含まれている可能性があり、特に肥育牛等の排せつ物を多く含む堆肥には、高い濃度でクロピラリドが含まれている可能性がある。このため、園芸作物等への施用に当たっては作物の種類や施用量に留意し、場合によっては施用を控える必要がある。」旨の情報を確実に共有すること。
特に、ポットにおける育苗又は施設栽培に施用する場合であり、かつ、トマト等のナス科、ダイズ等のマメ科、キク等のキク科の作物等、クロピラリドによる生育障害が発生しやすい作物で堆肥の施用を予定する場合は、情報提供先と確実にこの情報を共有すること。
イ クロピラリド感受性作物を用いた生物検定を実施した場合は、その結果を堆肥の提供先に伝達すること。
ウ 提供した堆肥によってクロピラリドが原因と疑われる生育障害が発生したことを把握した場合は、地域県民局に速やかに報告するとともに、県等による原因究明のための調査に協力すること。
(4)園芸農家・育苗業者の皆さんへ
ア 堆肥又は培土の提供を受ける際は、原材料に関する情報を提供元に確認するとともに、提供元において生物検定を実施している場合は、その結果の提供を求めること。
イ 堆肥又は培土に牛又は馬由来堆肥が含まれている、又はその可能性があり、かつ、生育障害の発生の可能性がないことを確認できない場合は、クロピラリド感受性作物を用いた生物検定を実施するなど、当該堆肥又は培土の施用を予定している園芸作物等に生育障害が発生する可能性がないことを確認した上で施用すること。
あるいは、生育障害が発生する可能性が低いイネ科作物や露地栽培のほ場に施用すること。
ウ 家畜由来堆肥を施用する際は、施肥基準等に即し、堆肥の施用量及び施用方法を適正に守ること。
エ 特に、トマト等のナス科、ダイズ等のマメ科、キク等のキク科の作物等、クロピラリドによる生育障害が発生しやすい作物をポットや施設で栽培する場合は、次による方法を選択するなど、生育障害を未然に防ぐ取組を実施すること。
① ポットによる苗生産では、深刻な生育障害が発生する可能性が高いことから、家畜由来堆肥の施用を控えること。なお、家畜由来堆肥を施用する場合は、生物検定等により生育障害が発生する可能性がないことを確認した上で施用すること。
② 施設において栽培する場合は、家畜由来堆肥以外の他の堆肥や原材料に変更するなど、家畜由来堆肥の投入量を低減するとともに、牛又は馬由来堆肥を施用する場合は、生物検定等により生育障害が発生する可能性がないことを確認した上で施用すること。
③ 家畜由来堆肥を施用する場合は、耕起により土壌とよく混和すること。
オ クロピラリドが原因と疑われる生育障害が発生したことを確認した場合は、各地域県民局に速やかに報告するとともに、堆肥又は培土の提供者に対し、その旨を伝達すること。
牛等の排せつ物に由来する堆肥中のクロピラリドが原因と疑われる園芸作物等の生育障害の発生への対応について