自分の道を切り開き、自分で創り出す。
やればやるだけ、結果はついてきます。
大事なのはマーケティング視点を持つこと。

佐々木基さん 黒毛和牛 短角牛

佐々木 基 さん十和田市 / 就農5年目

経営概要(栽培品目)
黒毛和牛繁殖(親牛17頭、子牛15頭)、短角牛肥育(5~12頭)
就農前の職業
地元の畜産法人勤務
  • 十和田市出身、東京農業大学卒業後、海外農業研修に参加し、約1年半アメリカアイダホ州の農場で畜産を学ぶ。2017年に帰国しUターン。地元畜産法人での雇用就農を経て、2018年に親の経営を継承し、2020年に「SASAKI FARM」として独立。黒毛和牛の繁殖と短角牛の肥育・加工・販売に取り組む。

就農した経緯

畜産農家になろうと思ったきっかけは、アメリカへ行ったことです。

実家は、祖父の代から水稲と黒毛和牛繁殖の複合農家で、大学生の頃に祖父が体調を崩してからは父が黒毛和牛の繁殖を続けていましたが、その当時、実家を継ぐという意識はなく、大学では環境保全や里山保全について学びました。

大学卒業後も、すぐに就職するより、20代前半の貴重な期間にまだ何か学びたいと考えており、研究室の先生の勧めで、公益社団法人国際農業者交流協会が実施する海外農業研修に約1年半参加しました。

研修コースは、アメリカの畜産コースを選びました。せっかく実家で畜産を営んでいるのに、これまで勉強する機会が無かったので、畜産を学べるならアメリカでもいいだろうと考え、アイダホ州の牧場で、肉牛が1万頭いる大規模放牧を経験し、日本では知ることができなかった畜産の世界に触れることができました。

放牧は、省力的でコストを抑えるというメリットだけでなく、利用されなくなった農地の有効活用や牛のふん尿を草地に直接還元できる資源循環型の持続可能な仕組みで、大学で学んだ里山保全と畜産業を掛け合わせた農業の可能性を感じました。

この経験から、自分が目指す畜産の方向性が見えたことで、畜産農家になることを決意し、経営基盤のある地元へ帰ることにしました。

就農準備・就農後について

研修や支援制度の活用について

海外研修の研修費用には、農業次世代人材投資事業(準備型)を利用しました。 十和田市に戻ってからは、黒毛和牛の繁殖肥育の一貫経営に取り組む地元の畜産法人に就職して、飼養管理や経営方法について2年半の間学びました。 その法人では、焼肉店も経営していたので、畜産農家の6次産業化の取組も直接見て学ぶことができ、とても勉強になりました。

その間に、自己資金で短角牛3頭を購入し、実家の牛舎での肥育にも取り組み、独立に向けた準備も進めていました。

就農後に受講した研修では、県主催の「トップランナー塾」が特に良かったです。講師のレベルも高く、内容も面白いです。参加した若手農業者の方々との情報交換もできて、畜産以外の農業にも触れることができました。

佐々木基さん 放牧 畜産

資金や機械等の確保について

もともと祖父と父が使っていた牛舎とトラクターは引き継ぎましたが、その他に必要な機械や設備の購入に関しては、自己資金で投資をしてきました。

雇用就農中に購入した短角牛を飼育しつつ、親から継承した黒毛和牛の繁殖の方で収入が入るようになると、その売上げで順次設備投資を進めました。

昨年は、黒毛和牛の子牛が成育不良で出荷できない時期があり、売上が大幅に減ってしまったため、現在は苦しいところですが、計画どおりに投資を進めていかないと経営に影響が出てしまうので、好調だった短角牛の売上げでカバーをしながら、計画を進めています。

アメリカの大規模放牧を経験し、自分の経営規模もできるところまで拡大したいと考えているので、今後、牛舎を建て、牛の数を増やしていくために、自己資金だけでなく、制度資金も活用する予定です。

生産物の販売について

自分が生産した肉は自分で売りたいと思い、自らブロックやスライス加工した精肉を、飲食店や個人のお客様に直接販売しています。

直売を始めた当初は、牛肉の部位が分からないゼロスタートだったので、と畜場から戻ってきた枝肉の解体ができず、販売できる肉を泣く泣く捨ててしまったこともあり、悔しい思いをしました。そこで、地元の精肉店でアルバイトをして、肉の部位や部位別のさばき方などの加工技術を自ら身に付けました。

販路開拓は、地元のイベント出店や、SNSを活用して販路開拓しています。卸先の料理人の方々が口コミで広めてくれて、自分の肉の魅力を知ってもらえたことで、一気に広まったことは嬉しかったですね。

コロナ前は関東の取引先が8割程度で、地元の取引先が少ないことが課題でしたが、コロナ禍となり地元での取扱いが増えたことで、お客様の反応を身近に聞くことができるようになり、ありがたいです。 今年は、西日本(大阪や愛知)にも販路ができ、順調に拡大しています。

販路開拓を始めた当初は、自分のライフストーリーを営業の武器にしました。自分がこういう人間で、こういうビジョンで、このような短角牛を育てている、と自分のことを発信して自分自身をブランディングしました。商品のブランド化よりも人物のブランド化は難しいですが、あえて難しいほうで勝負することで差別化を図っています。

生産だけを行う農家は他の農家と差別化が難しいので、経営者としてどう売るか、どうしたら売れるのか、売る仕組みづくりであるマーケティングまでやらなければいけない、という考えはアメリカで学びました。

その他にも、県内の若手畜産農家とともに「あおもりインターナショナルファーマーズブランド推進協議会」を立ち上げて、県産牛肉の販路拡大にも取り組んでいます。

佐々木基さん 放牧

地域との関わりについて

県内の畜産業界の中では、若手ということもあり、応援していただいている実感があります。

放牧地を探していた時も、同業者から周辺地域で使ってない牧野があるという情報をもらい、所有者に打診すると、快く貸してもらいました。使われていない牧野が増えてきている実感もあるので、自分が活用していきたい思いもあります。

また、地元の畜産農家から、僕の短角牛が美味しいと評価をもらっており、リピーターとなって購入してくれる方もいるので、すごく励みになりますね。

その他、十和田4Hクラブ(農業青年クラブ)の会長としても活動させていただいています。現在会員は約10名。業種関係なく面白いことをやりたいと考えていますし、4Hクラブ同士で全国的なつながりも広がるので、地域のネットワークも作りながら、今後、活動していきたいです。

就農後の生活について

朝が早いという印象を持たれますが、僕は朝8時頃から仕事をしています。大変な作業もありますが、毎日大変な訳ではないし、牛を放牧していると時間が空くので、その時間に経営について考えたり、事務作業をしたりしています。

やりがいや苦労した点について

やりがいはありますね。畜産は楽しいですし、自分が楽しいと思えることを創っていけばいいと思っています。 例えば、生産が楽しければ生産を重視すれば良いし、僕は自分が作ったお肉を食べてもらうことに楽しさを感じているので、販売が励みになっています。 一方で、果樹農家も同じだと思いますが、利益になるまでに時間がかかるため、耐え忍ぶ苦労もあります。

放牧 畜産 佐々木基さん

青森県の農業について感じたこと

青森県には熱血で面白い農家が多い印象です。ただ、まだ埋もれている気もします。もっと差別化をして、挑戦する人が増えて欲しい。 例えば、ワインぶどうを作ってワイン醸造に取り組む生産者や、麦や大豆の生産者が増えていけば、それらの副産物を畜産業で利用できるので、循環型農業の可能性が広がると思います。

効率的な生産を追求するだけでなく、持続可能な農業に意識を向ける生産者が増えれば、青森県の農業がレベルアップし、もっと面白くなると思います。

今後の目標

リスク分散を考え、黒毛和牛と短角牛の2本柱としていますが、どちらも高い評価を得られてこそプロだと思っているので、霜降りになる牛も赤身になる牛も両方育てることができるようになりたいと思っています。

また、将来的には、林畜連携のモデルを確立したいです。 大学の先輩が岩手県で山地酪農に取り組んでいる事例もあり、日本の7割が山である国土を有効活用するには、平地は畑作に使ってもらい、山を畜産に活用できると効率的であると考えていて、最近林業についても学び始めました。

他にも、おからやビール粕などの副産物を飼料に与え、畜産物を生産することで、エネルギーを無駄なくタンパク質に変えて人間に還元できる仕組みも確立したいです。

これらの取組は、大学で勉強した「里山」という海外にも知られている日本固有の循環システムに通じるもので、青森県で自然循環型の農業システムを形成していくことが夢です。

就農を目指す方へのメッセージ

何をするにしても自由に創り出せることが農業の魅力です。技術や販路の蓄積があるので、そういったものを活用して農業を始めてもいいし、自分の道を切り開きたいのなら、自分がやりたいことをやってもいい。 やるだけ、結果はついてきますよ。

そのためには、まずは人と会って「人を知る」ことが大事です。県内に限らず全国、業種も問わず、たくさんの人と知り合って欲しいです。例えば、りんご農家になりたいから、りんご農家やりんご業界だけの人と付き合うのではなく、それ以外の人と知り合うこともプラスになります。

もし生産物を自分で販売するなら、流通を知ることも大事ですね。自分の育てたものを棚に置いたから売れる、というわけではないので、選んでもらえる工夫が必要です。

放牧 佐々木基さん

先輩インタビュー

お問い合わせ

青森県 農林水産部 構造政策課 
担い手育成グループ
〒030-8570 青森市長島1丁目1-1
(代)017-722-1111 内線 5059 
(直)017-734-9463

就農相談以外のお問い合わせはこちら

就農や雇用相談に関する相談はこちら

facebookでシェア Xでシェア