成功の秘訣は『継続力』。
常に試行錯誤し、諦めないことが大事です。

高井啓さん・美奈子さん ミニトマト

高井 啓 さん・美奈子 さん平川市 / 就農11年目

経営概要(栽培品目)
ミニトマト ハウス9棟、ねぎ
就農前の職業
啓さん:自動車修理、美奈子さん:保育士
  • 平川市出身。2011年3月から1年間の農家研修を経て、2012年4月に独立就農。 ミニトマトと露地ねぎを組み合わせた複合経営を夫婦で実践。就農経験が浅い段階から、農協の研修会場として選ばれるなど生産技術が高く、地域の模範となっており、県民局重点枠事業では「ミニトマトフォローアップ指導員」として新規就農者等に対する指導を実施した実績あり。 夫婦で就農した体験談を就農希望者に情報提供できる青森県新規就農メンター。

就農した経緯

「収入を増やしたい」と考えたのが、農業を始めたきっかけです。

就農する前、私(啓さん)は自動車修理関係、妻は保育士として働いていました。仕事にやりがいはあったものの、仕事が多くて自分の時間が全然取れません。また、いくら働いても給料が上がらず、低賃金のままです。娘も小学生になり、収入面の不安から「このままじゃいけない。やった分だけお金になる仕事がしたい」と真剣に考えるようになりました。

私は最初、農家ではなく板金業の起業を考えていましたが、初期投資にかかる金額が大きいため断念。他の仕事を考えた時、昔からキャンプが趣味で自然が好きだということ、妻の実家の米作りを手伝っている中で農業に興味があったことから、農家になることを決意しました。

作物としてミニトマトを選んだ理由は、とにかく稼げるからです。就農する時、中南地域県民局に相談して、ミニトマトの収益率が高かったため、栽培を決めました。

「田舎暮らしに憧れている」「時間に縛られずゆとりをもって生きたい」といった考えではなく、「仕事で農業をやり、本気で稼ぎたい」という思いがとにかく強かったです。

就農準備・就農後について

研修や支援制度の活用について

農家になることを決意してからは、県民局、市役所、農協に通い、情報収集をしました。その後、平川市の雇用制度を活用し、農家研修を1年間続けました。翌年の秋から青年就農給付金(経営開始型)が始まったので、その制度を利用して自分の畑でミニトマトの栽培を始めています。このほか、日本政策金融公庫の新規就農・農業参入者向け制度を利用して、無利子で融資を受けました。

新規就農者向けの支援制度に助けられて、経営が安定しない時期を乗り越えられました。今考えると、何かに導かれたかのように上手くいったなと実感しています。

高井啓さん ミニトマト

栽培技術の習得について

1年間研修を受けましたが、実際に栽培を初めてみると、うまく育ってくれません。そこで、平川市・弘前市周辺のミニトマト農家に足を運び、「新規就農者の高井です。ミニトマトの栽培方法を教えてください」とお願いし、栽培技術を教えてもらいました。人によって栽培技術は微妙に違いましたが、実績のある生産者から実践的な方法を学ぶことができ、私としてはこれが一番勉強になりました。

色々なミニトマト農家を訪れたので横のつながりができましたし、「新規就農者だから」と支援してもらえることも多く、とても助かりました。

他には、農協主催の研修会です。最新の栽培技術の勉強になりますし、研修後に他のミニトマト農家の畑を見に行って勉強しています。

農地の確保について

現在、私たちの農地にハウス6棟、借りている農地にハウス3棟の700坪で栽培していますが、農地の確保はとても苦労しました。

就農時、農業委員会で農地を探しましたが、貸主がなかなか承諾してくれませんでした。新規就農者は、先祖代々受け継いできた大切な土地を貸す相手として経験不足であり、農地を有効活用できるか不安だから、といった懸念からでしょう。

このままだと農地が確保できないので、貸主の元に何度も足を運び交渉しました。諦めずに根気よく熱心に交渉を続けた結果、農地を借りることができました。しかし、なんとか借りられた農地は荒地で、前に栽培していたぶどう畑の単管や番線柵が残ったまま。春からミニトマト栽培ができるようにするため、真冬に夫婦2人で撤去作業をしたのがかなり大変でしたね。

最初の農地を借りるまでは苦労しましたが、ミニトマト栽培が順調になる頃には、他の農家から「うちの農地借りないか」と聞かれることも多くなりました。

基本的に、作物の栽培に適した良い農地は農家の間で貸し借りや売買の話が進められることが多く、新規就農者には回ってきません。譲ってくれる農地、貸出中の農地は、それなりの理由があるので注意が必要です。例えば、作物が育ちにくい、雨が降ると浸水しやすいなどです。

新規就農時の農地確保で苦労しないためには、研修中に色々な農家と関わることが大事です。顔見知りになり人脈を広げておくと、新規就農者だとしても快く貸してくれる人もいます。

資金や機械等の確保について

自己資金はほとんど無い状態で始めているので、早く農業で収入を得られるようになりたい思いが強かったです。

就農して1年目、2年目の経営が安定しない時期は、青年就農給付金(経営開始型)や日本政策金融公庫の新規就農・農業参入者向け制度を活用していました。

農業機械は、周りの農家が売ってくれた中古品を使いました。相場よりもかなり安かったので、初期投資を抑えられました。中古品なので機械トラブルや故障はありますが、前職の自動車修理技術を活かし、修理しながら使い続けています。

私たちが農家を始めた頃に比べ、今は新規就農者向けの補助制度が充実しています。研修制度もありますし、独立して農業経営を始めた後も手厚いサポートがあります。

自己資金があるに越したことはありませんが、農家を目指して貯金し続けるよりだったら、研修やバイトでも良いので、農業を始めることが大事だと思います。

高井さんご夫妻 ミニトマト

生産物の販売について

現在は農協に出荷しています。農業を始めたばかりの頃は、首都圏のお客様に直売することも考えていました。しかし、配送料や梱包費用などを計算すると、農協に出荷した場合と利益がほとんど変わりません。むしろ、梱包に手間暇がかかりますし、発送手続きもあるので、作業が大幅に増えてしまいます。
そこで、しっかり稼ぐために、自分は生産に集中し、販売を農協に任せる、今の販売方法を選びました。

販路の拡大は、規格外のミニトマトをジュースに加工して、ネット販売等を考えています。現状は、栽培・出荷の作業で手一杯なので、販売まで至っていません。利益を出すためには、委託加工ではなく、自分で加工する必要があります。今後は、娘2人にネット販売等での販路拡大を任せたいと思っています。

ミニトマトジュースはとても美味しいので、たくさんの人に飲んでほしいです。そのためには、手に取りやすい値段で販売する必要があると考えます。1回買って満足するのではなく、リピーターを増やせるような商品を販売していくことが目標です。

地域との関わりについて

助けてもらうことが多いので、横のつながりは大事だと実感しています。ミニトマト以外の農家とも積極的に関わるようにしています。

例えば災害があった時は周りの助けが無いと復旧は難しいですよね。実際に他の農家のハウスが災害でつぶれた時は、周りの農家たちと協力して復旧を手伝いました。1人だとどうしようもできないので、みんなの協力が必要です。

家が薪ストーブで、燃料の薪が必要になります。知り合いのりんご農家から、剪定した木を譲ってもらうことや、病気になった木の伐採を請け負ってその木を譲り受けることもあります。りんご農家は不要な木を処理する手間が省け、私たちは薪を無料で入手できるので、Win-Winの関係になっていますね。

「困っていることはないか?」と声をかけてもらえることも多く、みなさんに助けてもらっているな、と日々実感しています。

就農後の生活について

農家になって100%良かったと実感していますが、朝早く起きるのが辛いですね。5時から収穫しているので、4時過ぎには起きる必要があります。休みはありませんし、夏は出荷で忙しいので、家族でキャンプに行けなくなりました。この点については、当時小学生の娘達がかなり嘆いていましたね。

ただし、基本的に自分のペースで仕事ができるので、時間調整がしやすいのは大きなメリットだと実感しています。例えば、午前中は仕事、午後は娘達と海に遊びに行く、といったスケジュールを前もって組めるようになりました。冬は他の農家を手伝っていますが、時間に余裕があるのでキャンプの代わりに家族旅行を楽しんでいます。

やりがいや苦労した点について

やりがいはあります。ミニトマトは手間がかかり難しいですが、上手く育ってくれるとやっぱり嬉しいです。経験と勘に頼るのではなく、科学技術を取り入れながら効率よく栽培していきたいです。

今はミニトマトがメインですが、もっと稼げる作物があるならそっちをメインにしてもいいと考えています。昔ながらのやり方にとらわれず、柔軟に考えられるのは新規就農者の強みだと思います。

一方、天気の影響が大きいので苦労は多いです。雪でハウスが潰れないように、大雪が降った時は真夜中でも除雪が必要です。また、雨で冠水しやすいので水害対策も必要です。畑の水をポンプで排水する、浸水した箇所を消毒する、畝に酸素を送り込む等、作物を枯らさない工夫をしています。

農業は自然相手なのでどうしようもないことは多々ありますが、諦めたり、面倒だと思わずに取り組むことが、良い作物を育てるために大事だと実感しています。

ミニトマト 高井さんご夫妻

青森県の農業について感じたこと

今まで青森県で稼げた作物が、北海道に取られていると実感しています。北海道ブランドは別格で強いですが、食味や品質は青森県も負けていません。青森県ブランドとして、有効なPRや差別化ができれば、県内の農業は今よりもっと盛り上がると思います。

今後の目標

娘に加工したミニトマトジュースのネット販売等を任せ、販路を拡大していきます。高品質で美味しいミニトマトジュースを適正価格で多くの人に提供することが目標です。

従業員は通年雇用で考えているものの、現状の栽培品目、農地・ハウスの数では難しい状況にあります。そのため、まずは農地・ハウスの数を増やし、栽培できる作物の数を増やしていきたいです。

就農を目指す方へのメッセージ

諦めないことです。

新規就農者に指導をしていますが脱落する人はいます。上手く生産できないからと諦めてしまったり、農作業が辛いからと楽な方へ逃げたりしているのが原因。失敗の理由を自分で作っているからです。

農業は外での作業なので、暑くて苦しいことがとても多いです。天気の影響も大きく、毎年同じ量が生産できるとは限りません。うまく栽培できないことも多いでしょう。だからこそ諦めずに「良い物を作るにはどうすれば良いのか?」「なんで失敗したのか?」と考え、生産に活かすための試行錯誤が大事。

辛いことはありますが諦めずに継続することで、きっと成功への道が開けますよ。

ミニトマト 高井啓さん・美奈子さん

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青森県 農林水産部 構造政策課 
担い手育成グループ
〒030-8570 青森市長島1丁目1-1
(代)017-722-1111 内線 5059 
(直)017-734-9463

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