沢森 靖史 さん田子町 / 就農7年目
- 経営概要(栽培品目)
- にんにく 65a、えごま 35a
- 就農前の職業
- 家電量販店勤務・田子町地域おこし協力隊
- 宮城県出身、家電量販店勤務などを経て、平成26年度に田子町地域おこし協力隊員として移住。平成28年度に就農し、「ふくふくファーム」と名付けた農園で、にんにくやえごまを栽培し、EC販売にも取り組む。
就農した経緯
人それぞれ色々な理由があるとは思うのですが、自分は自然に近い所で暮らしたかったんです。サラリーマン時代に、朝、電車に乗って勤務先に行き、仕事が終わって電車で帰るという、人工的な生活を繰り返す中で、人間はもうちょっと自然に近い方がいいなと。田舎というか。
大学時代に政治学を専攻し、グローバル経済やコミュニティ経済を学んだこともあって、地方の将来に危機感を抱き、町や地域を活性化するには農業が重要だと考えました。そして、「地域おこし協力隊」として田子町へ移住し、協力隊の業務だけでなく、自主的に農家を訪ねたり、農作業を手伝ったことで、田子町の人との繋がりも深まり、自分でも「えごま」の栽培を始めて、就農に至りました。
青森県を選んだのは、サラリーマン時代の仕事で1カ月くらい青森に出張した際、凄く良くしてもらった記憶がありました。その時は秋田県にいたのですが、なんとなく青森がいいなと思っていた時に、田子町が「地域おこし協力隊」を募集していました。当時は、ずっとここで暮らすとか、もう地元に帰らないとかではなく、ふらっと立ち寄るような気持ちで来ました。
就農準備・就農後について
研修や支援制度の活用について
地元農家の手伝いをして身に付けた技術や人脈がありましたので、農家研修等は受けずに就農しました。
就農して数年後に受講した県主催の「若手農業トップランナー塾」は良かったです。若い農業者と知り合う機会も少ない中で、どういう考え方を持っているか、どういうベクトルなのか等、皆さんそれぞれ栽培品目も規模も違いますが、色々な状況が見えます。自分も勧められて受講しましたが、研修も座学も勉強になりましたし、絶対に受講された方が良いと思います。
栽培技術の習得について
基本的には農作業を手伝いに行って覚えました。分からないことは近くの農家に聞いたり、人と人との繋がりを大事にしていくことが、栽培技術の習得にも繋がっています。
農地の確保について
就農時は地元農家から農地を借りられることになったため、農業委員会に相談し、手続きを教えてもらいながら、農地法第3条の規定による許可申請を行い、それに基づいて貸主と使用貸借契約を結びました。
農地を購入するにも費用がかかりますし、実際に作付けをしてみないと農地の状況も分からないため、スタートは貸借が良いと思っています。
また、農地を借りる際は、契約書を交わすことが重要です。後でトラブルが発生しないように、貸主の農家と一緒に法務局に行き、農地の所在地や面積を事前に確認するなど、慎重に手続きをしました。また、貸主が、どういう理由でその農地を貸したいのか、どういう状態でその農地が維持されたら良いのかを知ることも大事です。借りた農地をきちんと管理していくことで、無料で貸してくれる人もいます。
農地を探していると話すと、「農地をあげる」という声も掛けてもらいますが、貰える場所はそれなりの理由がある場合が多いため、注意が必要です。
資金や機械等の確保について
就農には、ある程度の自己資金が必要です。ゼロスタートではなく、少し貯蓄してからスタートすることが基本だと思います。
自分の場合は、農業次世代人材投資資金(経営開始型)を生活資金として活用しながら、にんにくの栽培を自己資金で始めました。
機械については、使用頻度の高いトラクターやにんにく収穫機は中古で購入しましたが、年に数回しか使用しないものは近隣の農家から借りています。同じ地域では、繁忙期が重なるため、借りる際にも注意が必要ですが、就農当初は、機械ごと作業を手伝いに来てくれる人もおり、2年程はその形で作業を委託することもありました。 新品はできるだけ買わず、中古のものを探したり、借りることで初期投資を抑えることができます。
補助金は慎重に活用するべきだと考えていますが、情報は集めるようにしていて、少額でも必要な事業を選んで活用しています。
過剰な投資をして、気持ちが大きくなるよりは、少ない資金で準備を始めて、お客さんを増やしていくような堅実な経営が大事だと考えています。
生産物の販売について
「にんにく」はインターネットで販売しています。産直サイトなど複数利用しながら、各サイトのメリットやデメリットを見極めて継続することで固定客を増やしています。
農協との付き合いもあり、夏、加工はすべて農協にお願いしています。他の選択肢もあると思うのですが、農協の施設を貸して貰えますし、それらを自分で設備投資するとかなりのコストになりますので。
SNSを活用したり、他にも様々な販売方法があると思いますが、自分の場合は、お客様が欲しくて買って欲しい、探して買って欲しいという思いがあり、今の販売方法としています。
地域との関わりについて
地域の中での「困っていること」に対して、補いたいというか、仲良くなっていく過程として「自分ができることを手伝ってあげる」、それが信頼関係を築いていくと思っています。
面倒くさいと思ったら何でも面倒くさいし、面倒くさいことや、やりたくないことをその時にやる、明日にせずにその時にやればいいという考えで行動しています。やってみれば何とかなりますし、その姿勢や積み重ねが地域での信頼に繋がります。
就農後の生活について
時間に追われることがなくなりました。元々、夜更かしするタイプだったので、朝や日曜日が辛い時もありますが、自分の好きな時に休んだり、自由に時間を使っています。サラリーマン時代と比較すると、働き方としては健全だと思います。
トマトを栽培している義父は、夏は稼ぎ、冬は休む農業形態で、農業のプロフェッショナルとしても尊敬していますが、自分がそのレベルに達するにはまだまだ難しいです。
やりがいや苦労した点について
自分が栽培したものが売れて、「美味しい」と言ってもらえることが、シンプルですが嬉しいです。時間や手をかけて育てていますし、病気が出たりしないよう責任もあり、日々気が抜けない状況の中ですので、尚更、喜びややりがいを感じます。
青森県の農業について感じたこと
青森県は凄く良いと思います。美味しい野菜が採れますし、海にも囲まれ、食料生産的にバランスが良く、東北でもなかなかこういう地域はないですね。りんご、にんにくなどの日本一の産地があることが強みですし、冷蔵庫や乾燥施設も整っています。アドバンテージがあって、ブランド力、産地としての体制も整っていますし、生産者にとってのメリットが大きいです。技術、応援体制、施設に加えて、町もそれに合わせた補助に取り組んでいる印象があります。
今後の目標
有機JASで作物を作りたいです。そして、それらを増やすことも目標です。あとは、義父のトマト栽培も手伝えるようにしたいですね。
就農を目指す方へのメッセージ
なぜ農業をやりたいのか、作りたいものがあるのか。作りたいものがあるなら、その産地に行くことだと思います。産地のものを生産した方が絶対に有利です。 そして、現地に行って、ただ視察するだけでなく、経営形態を知ることも重要です。
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