創意工夫で独自の栽培システム確立!
持続的経営のカギは6次化と省力化

掲載日:2024年12月9日

斎藤靖彦さん

斎藤 靖彦 さん弘前市 / 有限会社まごころ農場 代表取締役

経営概要(栽培品目)
ミニトマト(1ha)、りんご(90a)、農産加工

早くから水耕栽培に着目し、独自に考案した栽培システムで、高品質・高糖度のミニトマトを生産する技術を確立。
地域で収穫された農産物の加工・販売も手がけ、地域の農業活性化に貢献している。
青森県農業経営士(平成12年認定)。大日本農会農事功績表彰・緑白綬有功章、全国農業コンクール優秀賞、明日を拓く「青森県農業賞」個別経営奨励賞、弘前市ゴールド卍賞、弘前マイスターなど。

会社概要

会社名 有限会社まごころ農場
代表取締役 斎藤 靖彦
所在地 【事務所】〒036-8121 青森県弘前市大字薬師堂字熊本16
【加工場】〒036-0143 青森県平川市吹上安田308
創業 1996年
連絡先 TEL:0172-92-2054
FAX:0172-92-2057
事業内容 ・ミニトマトの生産、販売
・農産加工品の製造、販売
従業員数 従業員数 家族3人、常雇用30人、季節雇用5人
まごころ農場Webサイト https://magokoro-farm.shop/

就農した経緯

高校卒業後は農協に勤めていたのですが、水耕栽培に興味を持ち、試験的に葉物などさまざまな野菜を育ててみました。結果、ミニトマトが有望そうだと感じたのが始まりです。

まずは30坪の園地で試験栽培をして手ごたえを得て、平成元年に生産者へ転身。100坪のハウスで本格的にミニトマト栽培を始めました。
当初は、つくば万博で目にしたシステムを取り入れようとしたのですが、メーカー製の設備は莫大な導入コストがかかりました。
これでは絶対無理だと思いましたが、書店で「トマトがなる本」といったような水耕栽培キットを見かけ、それがヒントになってロックウールを用いた独自の水耕栽培が設計できました。一番大事なのは溶液の配合や濃度。これを確立するのに4~5年かかりました。

その間には台風19号(平成3年)でハウスが潰れてしまうなどの苦労もありましたが、就農から5年目ごろからは要領をつかみ、毎年のようにハウスを増設していきました。

経営の取り組みについて

栽培・生産への取り組み

「できるだけコストをかけない」「他の人がまねできない」という手法でやりたい、との姿勢から生まれたのが現在の栽培システム。

ロックウールにまとまったミニトマトの株を複数個、アイスボックス(りんご梱包用発泡スチロールケース)に入れて生育しています。アイスボックスは大量流通品のためコストを抑えられ、密閉すると外気の影響を受けず、箱単位で管理するため、もし病害が発生しても全体には広まりません。水耕栽培に乗り出そうとしたときに検討したメーカー製の設備は1坪あたり5~8万円、安いものでも2~3万円でしたが、自作の設備ではおよそ3000円程度に抑えられています。

斎藤靖彦さん ロックウール栽培システム
アイスボックスに入れて栽培するシステム

栽培面積を年々広げつつ、一時期は20種類以上の品種を栽培しました。平成15年ごろには当時は全国的に珍しかったカラフルな品種にも挑戦。見本市に出展すると驚くほど注目を浴びましたが、それ以後に各地で生産数が増えてきたのをみて撤退。現在は収量性に優れた「サマー千果」という品種一つに絞って生産しています。

加工品について

経営規模が拡大化するにつれ従業員数は増えましたが、ミニトマト栽培だけでは夏場の期間しか雇用できず、できるだけ安定的に働いてもらいたいと始めたのが加工部門でした。

平成17年のスタート当時は倉庫を加工場にしてトマトでジュースやジャム、ゼリーなどを製造し、平成24年には平川市に現在の加工場を建設。従業員が増えるにしたがってリーダーの育成にも取り組みました。
今ではようやく、それぞれに現場を任せられるような体制に。長らく調理経験があって商品開発を専門に行うスタッフが加わるなど、ここ数年で人材もそろってきました。

斎藤靖彦さん 加工場
加工場

アイテムは当初、トマト中心でしたが「りんごの商品はないんですか?」という問い合わせが多く、次第にりんごの加工に注力するようになりました。現在のトマト加工品はジュースのみで、基幹商品はりんごのセミドライ商品になっています。すりおろしりんごなど、企業向けプライベートブランド用商材も大きな柱。まだ研究段階ですが、栄養強調表示商品などの開発も行っています。

現在、新工場設立も計画しており、手作業で行っている工程を機械化・自動化していき、将来的には生産能力を現在の4~5倍程度に増強したいと考えています。

斎藤靖彦さん 加工品の数々

経営で重視していること

・自分で食べておいしいものを消費者に届ける
・できるだけ中間業者を通さず直接販売を心がける
・どんなニーズがあるか常にアンテナを立てる
といったことを大切にしています。

可能な限り消費者と近い距離で、商品の評価を直接聞くようにしていますね。

地域農業に貢献している取組み

これまで5人の生産者の就農をサポートしており、それぞれが津軽地域でミニトマト生産者として独立しています。
令和5年からは弘前市の里親農家(市内での就農希望者に対して農業研修や地域定着・農地取得などを支援する事業)にも登録されたので、今後はそちらからの受け入れもしてきたいと思っています。

また、地域の農家との勉強会や研修会にも取り組みたいですね。

斎藤靖彦さん インタビュー

加工に用いるりんごは、地元生産者や近隣の移出業者から直接仕入れています。ジュースなどの加工用に回るようなりんごは生産者にとって利幅が少ないのですが、自社では加工度を上げて付加価値の高い商品にすることを心がけているため、より高値での買い上げが可能です。取引事業者からは適正価格で買い取ってもらえると喜ばれています。

斎藤靖彦さん 加工品

産地発展のために重要だと考えていること

ミニトマトは生産に多くの人手を必要とする作物ですが、それゆえに労働力不足が問題化している昨今は厳しい状況が続いています。「現在の栽培方法で果たしていいのか?」とは常に自問していて、例えば実にヘタが付かない品種を導入することを考えています。
すでに一部では流通している品種なのですが、振動を加えると実が落ちるので、まとめての収穫が可能。実は光センサーで色分けして、流通時期ごとに選別することで人手がかからないミニトマト生産ができます。

斎藤靖彦さん ミニトマト
斎藤靖彦さん 袋詰めされたミニトマト

農業経営士としての活動

平成12年に青森県農業経営士の認定を受け、平成18~21年には青森県農業経営士会の会長も務めました。
それぞれの地域でトップの、ものすごいことをやっている生産者たちと仲間になることができ、大いに刺激を受けました。全国組織の理事も務めたことで、県外にもネットワークが広がり、現在も交流が続いています。

プライベートの過ごし方・農業ならではの楽しみ

趣味も仕事にするような仕事人間でして(笑)。つくることが好きですね。ミニトマトでいえば、遊びでいろんな品種を栽培しています。
あとは4~5年ほど前から釣りに凝っています。友人が陸奥湾でホタテを養殖しているのですが、船を出すときに乗せてもらい、友人が仕事をする傍らで自分は釣りをするという(笑)。この前は50センチくらいの鯛を釣りました。ふぐも釣れるので、自分で捌くのにふぐ調理師免許も取りました。

今後の展望と課題

斎藤靖彦さん インタビューの様子

農業経営をこれからも続けていくには、省力化が必要です。
人手不足や後継者不足により、ミニトマトだけでなくりんごの生産者も減っています。将来的には加工原料を確保できなくなると危惧しており、そのため自社でもりんご生産に乗り出しました。
来季から収穫が始まるのと同時に、作付面積も順次増やしていくつもりです。取り入れているのは、比較的労働力がかからない高密植栽培。りんご生産においては新参者ですが、独自にミニトマトの低コスト栽培法を確立した経験を生かし、苗の確保や支柱などの設備の整え方などに考えを巡らせているところです。

地域の中で農業の省力化・低コスト化を確立し、その流れをほかの生産者さんにも広げていきたいという思いがありますね。

若手生産者・新規就農者へのメッセージ

「挑戦」ですね。怯むことなく、何事にも挑んでいってほしい。
今やられている既存の手法の延長ではどうしても後追いになってしまう。新しいものを開発していかないと農業経営を長く続けることはできないと思っています。常に先を見据えて、挑戦してもらいたいです。

斎藤靖彦さんメッセージ

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