親族伝来の農地を守るため自衛官から転身。
時代の先を見据えた農業経営に挑戦!

田邊真太郎さん

田邊 真太郎 さん平内町 / 就農5年目

経営概要(栽培品目)
水稲18ha、ソバ6ha、大豆3ha、野菜(ピーマン他、多品目栽培)15a
就農前の職業
自衛官
  • 平内町出身。高校卒業から12年勤務していた陸上自衛隊を退職し、令和2年にコメ農家の伯父の後継として里帰り就農。令和5年に「株式会社マルサンファーム」を設立し法人化。親族からの事業を引き継ぐ形で産直兼食堂施設「紫ぜん」や精米所も経営している。

就農した経緯

一番大きいのは、伯父がやってきたものを引き継いでいきたいという思いですね。後継者がいないと聞いていたのに加えて、町内に耕作放棄地が増えていく様子も残念に感じていました。農業にはもともと興味があり、自衛隊に入隊して間もなくの時点でも就農を考えました。

そのときは資金面でハードルの高さがあり踏み切れませんでしたが、勤務が10年を超えるころには「このまま公務員でいいのか」と、“人生の分岐点”を意識しまして。最終的には伯父の後ろ盾があって親族伝来の農地を受け継ぐことを決意しました。

田邊真太郎さん 田んぼ

就農準備・就農後について

どのようなサポートを受けましたか

国の「農業次世代人材投資事業(※現:経営開始資金)」の交付を受けたほか、行政の補助金や支援制度を活用して設備を整えました。国の補助事業とJAの融資を組み合わせてトラクター、県の補助事業と日本公庫の「経営体育成強化資金」を組み合わせてコンバインを導入し、精米所と籾殻庫の建設に日本公庫の「青年等就農資金」を利用しました。

水稲生産が安定化するまでの野菜生産には、町の補助金を使ってビニールハウスを整備しました。

栽培技術の習得はどのように行いましたか

就農1年目は伯父に付いて見よう見まねでやってみて、2年目以降は身に付いた知識や技術がどうなのかと、さまざまな研修会に参加しました。農協の栽培講習会や県が主催する新規就農者向けの研修会など、とにかく行けるものは全部行っていましたね。そこで関係ができた農家さんからもお話を聞いたり、ネットで調べたりして、理解を深めていきました。

田邊真太郎さん 作業の様子

農地の確保について

はじめは伯父が持つ水田のうち4haを引き継ぎ、その後は町内の後継者が不在だった休耕田を譲り受けて4年後の令和6年時点では18haにまで広げました。

就農当初は作付面積が小さく、拡大していくめども立っていないのが不安でしたが、地域の会合に足しげく参加して顔を売っていくうちに「あそこは空いてる」などの情報を教えてもらえるようになりました。50~60代以上の世代ばかりの中に30代の自分が一人だけ飛び込む状況でしたが、コミュニティは大事にしようと、会合には必ず出席していましたね。

資金や機械等の確保について

伯父が所有している機械等を借りての営農活動はできましたが、トラクターやコンバイン、精米所の建屋は自らで取得、建設しました。

就農当初は貯金がそこそこあったので「まあいけるだろう」と考えていましたが、資金はお話にならないくらい、全く足りませんでした。そこで、支援制度や助成金を活用しながら設備投資を行いました。

水稲栽培は莫大な設備投資が必要で、自分は伯父の資産があったからできた部分が大きいです。

生産物の販路と販路開拓の方法について

3~4割を直販、残りを卸売業者に出荷しています。直販は運営する産直施設「紫ぜん」のほか、ネットでもふるさと納税や大手産直サイトを介して販売しています。

卸売について、以前はJAへの出荷が主だったのですが、米の商談会に参加したことでさまざまな業者とのつながりができ、販路が広がりました。現在は大手卸売会社への出荷が多くを占めています。今後は価格面でリスクはありますが、海外輸出も考えています。

運営する産直施設「紫ぜん」
販売しているお米

地域や地域農業との関わりについて

農地の確保についてでもお話ししましたが、とにかく会合には必ず参加。横のつながりをつくるため町商工会青年部に所属するなど、コミュニティを大事にしています。30~40代の若手農家で集まって親睦を深めたり情報交換したりも。

また、目下取り組んでいるのは地域の未利用資源の活用です。平内町はホタテの産地ですが、毎年多額の費用をかけて貝殻を廃棄処分しています。そこで、貝殻を活用したホタテ残渣たい肥を取り入れることで資源循環、処理費用削減を図っています。

町内学校給食に平内産の特別栽培米(特栽米)を使ってもらう働きかけもしています。子どもたちの食育や特栽米の販路確保の面でメリットがあるのでやりたいと考えています。

就農後の生活について

自衛官時代とはうって変わって、お酒は飲まなくなりましたね(笑)。忙しくて飲んでいる時間がない。就農前と比べると家族と過ごす時間も減りました。そこは今の課題です。

八戸市での自衛隊勤務時代に出会った妻と結婚し、その後に自分の地元へ戻った格好ですが、「紫ぜん」が親族の店舗兼住宅だったことで住まいには困りませんでした。

田邊さんの一日

農繁期

農閑期

年間スケジュール

表は横にスクロールできます。

3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月
田植え 管理作業 稲刈り 片付け作業 年間計画策定、事務作業、栽培技術などの学習

就農後の良かった点、苦労している点など

自分の就農をきっかけに、自分と同じく自衛官だった兄(喬之さん)も今年4月から就農しました。また、いとこが東京からUターンして現在「紫ぜん」で働いています。農業経営をする中で、自分の周りに人が集まってきてくれていることがうれしいですね。

苦労していることの一番は資金面。設備投資にどうしてもお金がかかります。就農当初は事業経験がなかったため経済的に不安しかなく、公務員との違いを痛感しました。それでも就農を後悔したことは一度もありませんでしたね。決断までに2~3年を要しましたが、今から振り返ると、もっと早く始めればよかったと思っています。

(喬之さんの話)農業をする弟は忙しいのが見て取れましたが、それよりも楽しそうだなと思っていました。自衛官時代は訓練に費やす時間が長く、終わりが見えない部分もあって、そこがつらさにもなっていましたが、農作業は1日の終了時間がおおむね決まっていて、収穫に向けて成果が積み重なっていく感覚もあるので、やりがいがありますね。

青森県及び青森県の農業について、感じること

青森県は “商売県”ではないですよね。県民には「米とりんごはもらうもの」という意識がありますし。農産物は、単純に作って出荷すれば売れるというものでないと思います。青森は農作物の栽培によい土地柄ですが、商売として取り組む面では、もっと違うところに目を向ける必要があるのでは。

また、少子高齢化が進む中、人口流出を抑える政策に、農業をもっと活用してほしいです。例えば先に挙げた学校給食用米の特栽化は、他県と差別化した教育環境づくりを進めるきっかけの一つにもなるのではと考えています。

今後の目標について

経営を大規模化していきたいです。営農地は平内町内にとらわれずやっていきたい。

繰り返し挙げますが、学校給食用米の特栽化、有機栽培も重要視しています。国の施策では有機農業を推進していますが、販路が細い点から多くの農家が特栽や有機栽培に踏み込み切れていません。そこに給食という時々の相場に左右されることのない決まった販路があれば、作付けを増やせる。県内に限らず、都市部の学校などの大消費地にもつながればとも考えています。

時代に遅れない農業、先の見える経営を目指していきます。

新規就農を目指す方へのアドバイス・メッセージ

農業は、結局は人のつながりだと思います。情報を得るためにはコミュニティに属することが重要で、例えば消防団などがいいんじゃないかと。そして自分の考えや思いを表明していくことも大切です。発信していると自分に関係のある有益な話をもらうことがありますので。自分自身、就農前からいろんな人に会えば違った展開になっていたのではと思います。

あとはどなたかの農家さんが言っていたのですが、農業に大事な要素は「借りる」「もらう」「拾う」だと(笑)。資材や機械の調達など、できることはありますので、就農で困ったら自分に相談してほしいです!

田邊真太郎さんと田邊喬之さん 田んぼ

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青森県 農林水産部 構造政策課 
担い手育成グループ
〒030-8570 青森市長島1丁目1-1
(代)017-722-1111 内線 5059 
(直)017-734-9463

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