東京のIT・メディア職からUIターン就農!
「食への想い」あふれる有機野菜が経営の柱

掲載日:2026年1月9日

加納 良介さん・可奈恵さん

加納 良介さん・可奈恵さん南部町 / 就農3年目(2023年4月〜)

経営概要(栽培品目)
さつまいも46a、じゃがいも45a、にんにく10a、とうもろこし5a、加工品販売
就農前の職業
良介さん:販売営業・Web広告マーケティング
可奈恵さん:テレビ局

加納良介さんは東京都大田区、可奈恵さんは南部町(旧福地村)出身。良介さんは化学メーカーの営業を経てインターネット広告の営業・通販会社、可奈恵さんは東京のテレビ局に勤務。第一子の誕生とコロナ禍をきっかけに、可奈恵さんの故郷での就農を志し、2021年に家族で南部町へ移住。特定地域づくり事業協同組合「人材サポートなんぶ協同組合」の職員として栽培技術や知識を学び、2023年に独立就農。
さつまいもをはじめとする有機野菜を栽培しており、2024年にオーガニックエコフェスタ2024「身体に美味しい農産物コンテスト」サツマイモ部門最優秀賞を受賞。

就農した経緯

「作り手」への憧れと、子どもの食育がきっかけ

良介さん:妻の地元である南部町を初めて訪れた際、町の文化や食、人に強く感動しました。同時に、耕作放棄地や後継者不足といった地域課題のリアルにも触れました。その時点ですぐに就農を決心することはなかったのですが、子どもを授かったこととコロナ禍が大きな転機になりました。世の中や自分たちのライフスタイルが変わり「将来はどうなるんだろうか?」と。

可奈恵さん:小さい頃、リンゴ畑で作業を手伝ったり、田んぼで泥んこになって遊んだりした記憶が強くあって、いずれは自分の子どもにもそういう体験をさせたいな、という気持ちは持っていました。ただ、当時は自分たちの夢や仕事の優先順位が高かったので、それは二の次という感じで。やはりコロナ禍が大きかったですね。子どもを授かったことで、食や健康、子どもの未来についてすごく考えました。

良介さん:わが子への深い愛から、妻が食育とフードコーディネーターの資格を取得したことが、私の人生を根底から変える一歩となりました。「食は、何よりも大事だ」と、心からそう思うようになったのです。メディアの仕事を通じて、私たちは「伝える」ことを生業にしてきました。しかし、その先に、もっと深く、命に直結するメッセージを届ける道はないか。そう考えたとき、自ら土に触れ、「作り手」となることこそ、最大のインパクトを生むと考えました。その時、まるで導かれるように蘇ったのが、あの時訪れた青森の情景です。食への関心が高まったこの運命的なタイミングと、あの地の記憶が一つに結びついた瞬間、私の心に灯がともりました。

可奈恵さん:ただ、私の中には当初、「Uターン就農」という考えがなくて。地元のお年寄りが大変そうに農業をやっているイメージが強かったので、私はなかなか動けませんでした。そこで夫は「今までの農業をやろうと思っているわけじゃない」と、経営ビジョンを何度もプレゼンしてくれて。やろうとしているのは有機栽培で、土や環境にも優しく、「食の安全」という点で共感しました。

良介さん:「未経験でゼロから始める農業をビジネスとしてどう成立させるか」という問いを深掘りしていきました。そして、数ある選択肢の中から、有機栽培というフィールドに、自らの挑戦の鍵を見出しました。私たちは、有機的なアプローチを通じて、お客様が楽しんで食べてもらえるような美味しくて栄養価の高い農産物をつくり続けることで「高い付加価値」を創造できると確信しています。アプローチこそ夫婦で異なりましたが、「食の根源的な力」を信じる心は一緒でした。その熱い思いが結実したのが、「南部町で、有機農業を通じて、まだ見ぬ食の可能性を開花させる」という、揺るぎない共通のビジョンです。私たちは今、単なる生産者ではなく、地域と食卓の未来をデザインする挑戦者として、この地に立っています。

加納さん夫婦 収穫作業

就農準備・就農後について

どのようなサポートを受けましたか

良介さん:まず在京時に、千葉県の農家でのインターンシップに参加しました。ただ、青森とは気候が全く違うので、「これは実際に行ってからじゃないと分からない」と思い、勢いで南部町に移り住みました。そして運よく、設立したばかりの特定地域づくり事業協同組合「人材サポートなんぶ協同組合」に派遣職員(農作業スタッフ)として加わることになりました。そこでの約2年間の勤務が、農業経営を学ぶ上で非常に大きかったです。

組合では、農作業だけでなく事務局業務や経営計画の立案、組合員集めまで担当し、単なる農業技術だけでなく、経営者としての視点、そして人脈の重要性を学ぶことができました。組合を通じて地域の13の農業経営体をローテーションで回り、多様な経営方法や栽培方法を学べたのも貴重でした。県営農大学校にも通いながら、栽培の基礎やトラクターの運転等も学びました。営大で学んだことを組合の現場で実践し、アドバイスをもらう、という形で経験を積みました。当初は有機栽培について学ぶことができないために回り道かと思いましたが、これらの経験が現在の経営にも生きていますね。

特定地域づくり事業協同組合とは

地域人口の減少に直面している地域において、農林水産業、商工業等の地域産業の担い手確保が必要な産業に対し、特定地域づくり事業協同組合が地域内外の若者等を雇用し、就業機会を提供することで、地域社会の維持・地域経済の活性化を図るもの。

加納良介さん インタビューの様子

栽培技術の習得はどのように行いましたか

良介さん:有機栽培については、お世話になっている方からご紹介いただいた、黒石市の「(株)アグリーンハート」の佐藤拓郎さんとの出会いが大きかったです。佐藤さんから勉強会に誘っていただいたことをきっかけに、「くろいし有機農業推進協議会」に参加させてもらうようになりました。そこでオンラインやオフラインで様々な農家さんから話を聞き、学んだやり方を自分の畑に取り入れてみる、という感じでしたね。
現在は南部町だけでなく青森県全体、もっと言えば東北、全国というくくりで、さまざまな農家さんたちとのつながりができています。

農地や機材、資金の確保について

良介さん:経営開始にあたり、水稲などは初期投資が大きいこともあって、初期投資を抑えてスタートできるさつまいも、じゃがいも、にんにくを選びました。農地は、妻の親戚の畑や、紹介いただいた休耕地を借り、そこにあったトラクターなどの農業機械も一緒にレンタルさせていただきました。
運転資金は支援制度を活用し、就農当初は「経営開始資金(夫婦型)」、今年度は青年等就農資金の支援を受けました。加えて東京時代の蓄えとリモートワークの収入で賄いました。

さつまいも 圃場

生産物の販路と販路開拓の方法について

良介さん:当初は自社のECサイトや、地元の飲食店、青果店、前職時代のつてをたどって東京の店舗などにも販売していました。あとは地元のイベント、例えば、地元のプロサッカークラブ「ヴァンラーレ八戸」の試合会場やお祭りなど。現在は卸売りが6〜7割まで増えてきていますが、今年は干ばつの影響も大きく、一部作物では十分に供給しきれませんでした。来年以降は生産量をしっかり増やしつつ、同時に直販でのお客さんとの繋がり、ファン作りも大事にしていきたいと思っています。

さつまいも

地域や地域農業との関わりについて

可奈恵さん:東京では隣に住む人の顔が見えない感覚でしたが、田舎は人のつながりを本当に大事にしていると感じます。何かを「やりたい」って言ったら、誰かが紹介してくれた知り合いの協力で、もう次の日には思いをかなえてくれる、みたいな。本当にご縁ですね。

良介さん:移住した目的がはっきりとあったので、アンテナを張っていると同じ考えを持つ人たちが近づいてくれます。就農して良かったと感じるのは仲間が増えたことですね。農業者の仲間もそうですし、プライベートでも付き合える仲間、人との出会いが多いことで、生活が豊かになっていると感じます。東京のマンションに暮らしていた時は、それこそ隣に誰が住んでいるかも分からなかったので。あと、人手がないというので地元の消防団にも入りました。こども園や小学校との交流で収穫体験などもやっています。

加納可奈恵さん インタビューの様子

就農後の生活

良介さん:移住してから子どもが2人生まれたので、自然と子ども中心の生活になりました。時間の融通が利きやすくなったというのが、東京の生活との大きな違いだと思います。気持ちやフットワークも軽くなった気がします。(物心両面で豊かになってきたと感じています。)就農して世帯年収は一時的に下がりましたが、来年には超えそうなところまで盛り返してきています。

可奈恵さん:東京では表に出るのが苦手だった私も今ではPTA役員などをやっています(笑)。
つい最近、夫が青森駅でたまたま満員電車に乗ることになったんですけど、それだけでもう疲れちゃったみたいで。「青森の満員電車」って東京時代なら余裕なのに(笑)。もう東京で電車には乗れないなと思いました。今は自分たちがやりたいことをやっているからストレスがない、というのが一番でしょうか。

良介さん:自分たちで経営をしているので、0か100か、やるかやらないかで結果が変わってくる。責任は大きいですが、その分裁量も大きいので、やりがいに繋がります。サラリーマン時代より、やりたいことがスピーディーにやれるのは大きいですね。

加納さん夫婦の一日

農繁期

加納さん夫婦の一日 農繁期

農閑期

加納さん夫婦の一日 農閑期

年間の作業スケジュール

表は横にスクロールできます。

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
じゃがいも 播種 栽培管理 収穫
さつまいも 植付 栽培管理 収穫
とうもろこし 播種 栽培管理 収穫
にんにく 栽培管理 収穫 植付 栽培管理

やりがいについて

良介さん:気候が毎年違うし、思い通りにいかないことばかりです。でも、農業はそこが面白い。解明されていないことがまだまだたくさんある。その手探り感が楽しいです。
そうして試行錯誤しながら作ったものを販売して、お客さんから「美味しかった」と笑顔で言ってもらえたり、リピーターになってくれたり。そういう反応を直接受け取れるのが、一番嬉しいですね。子どもたちも自分たちの作った野菜は「おいしいおいしい」といっぱい食べてくれる。「良いものが作れているかもしれない!」と、自信につながります。
「誰のために作っているのか」がはっきりしているので、その人たちが喜んでくれるように、食卓が明るくなるように、という思いでやっています。そこが一番のやりがいですね。

加納さん夫婦 収穫作業

青森県及び青森県の農業について、感じること

良介さん:青森県の野菜や果物は、本当にどれも美味しい。ポテンシャルが相当に高いと感じています。レベルが高い産地で農業をやらせてもらっているからこそ、自分たちもより良いものを生産しようという使命感があります。あと、青森県には昔から農繁期は農業をして、農閑期は出稼ぎに行くというスタイルがありました。今でいう「副業」が当たり前の土地柄だな、と。自分も農業を軸にしながら、リモートワークで別の仕事をしていますが、そういう働き方に抵抗がない文化があると感じます。
農繁期と農閑期がはっきりしているからか、農家さんの瞬発的な集中力が凄まじいのも感じますね。休む時は休む、というメリハリが、仕事のクオリティの高さに繋がっているんだなと学ばせていただきました。

今後の目標

良介さん:まずは単収を上げて経営を安定させた後、作付け規模を拡大していく計画です。当面の目標は5年以内の法人化。そのタイミングで、農業を軸とした新規事業を展開したいと考えています。ファンや地域の人たちが集えるコミュニティスペースづくりや、食育、伝統工芸品との連携など、農業を通して「今までありそうでなかったもの」を南部町で実現したいと思っています。

就農を目指す人へのアドバイス、メッセージ

良介さん:事前の情報収集は重要です。実際に就農してみると、甘くない世界であると身にしみて感じます。前もって農業についてしっかりと調べる必要があると同時に「えい!」という気持ちで行動することも大事です。結局はそこをできるか、できないかが大きいと感じます。
また、どの作物を経営するにも、お金はすごくかかります。当面の生活費が確保できなければ就農してから苦しむので、資金面の準備も大切です。
農業は自分たちだけで黙々と作業することばかりかと思っていましたが、実際は人との関わりが非常に多い。「人付き合いが好きかどうか」も左右する部分かと思います。
あとは、就農する確かな目的があるかどうか。自分たちはそれがあったので未経験でも飛び込めたと思います。意欲があれば、まずは勇気を出して挑戦してほしいですね。

農園ののぼりを持つ加納さん夫婦

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就農支援制度
相談窓口一覧

先輩インタビュー

加納良介さん・可奈恵さん
独立自営就農
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南部町 / さつまいも・じゃがいも・にんにく・とうもろこし
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経営士・農業士
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山田俊さん・園実さん
独立自営就農
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経営士・農業士
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弘前市 / ミニトマト,りんご,農産加工
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経営士・農業士
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鯵ヶ沢町 / 水稲,大豆,りんご
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青森県 農林水産部 構造政策課 
担い手育成グループ
〒030-8570 青森市長島1丁目1-1
(代)017-722-1111 内線 5059 
(直)017-734-9463

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